トドラ渓谷のヤギさん郵便

2017年7月1日(土)

朝食はモロッコ風トマトオムレツ、パン、オレンジジュース、コーヒーと緑茶。

デザートにスイカ。

白ご飯に味噌汁、生卵に納豆、梅干しと漬物、できれば切身の塩鮭。

定番の日本の朝飯を期待するのは、やはり無理だった。

昨日の娘たちは朝早く出発していなかった。

今日、明日の二日間は我々ふたりだけが宿の客らしい。



フアイサルとトドラ渓谷へ。

宿から15分ほど歩いて行くと、両側に切り立った岩の断崖が口を開けて待っていた。

屏風のように垂直に立っている岩山の高さは400メートルくらいか?

頂上を見続けるには角度がきつくて、首が痛くなる高さだ。

渓谷の幅は50メートルほどで、左半分が舗装道路、右半分が小川と川床になっている。

アラビアの衣装や装飾品などの小物、じゆうたんや布地を売る露店が

200メートルほど並んでいる場所が一番の景勝地らしい。

露店がきれたあたり、川床が広くなっている場所に行き当たると、

ヤギの群れが遊牧民の親子に連れられて水を飲みに来ていた。

8才くらいの男の子が自分の身長の5倍はありそうな細い木の棒を操って、

ヤギたちが群れから離れないように見張っていた。

その数、100頭余り、全身真っ黒の黒ヤギが多いが、

中に白ヤギや白黒のミックスヤギも少ないながら混じっている。

写真に撮ってラインで、動物と働く車と飛行機が大好きな孫のそーたに送信した。

そして、こう書いた。

『黒ヤギさんからお手紙ついた
白ヤギさんたら読まずに食べた
仕方がないがないのでお手紙書ーいた
さっきの手紙のご用事なあに

さあ、そーたも歌いましよう

その次は、

白ヤギさんから、、、、』

三歳と11ヵ月の孫は、

じいちゃん、それはね、と

『白ヤギさんからお手紙ついた
黒ヤギさんたら読まずに食べた
仕方がないのでお手紙書いた
さっきの手紙のご用事なあに』

って歌うだろう。

そうだね、よくできました。


---------------

この童謡は二番しか歌詞がない。

純粋無垢な孫は何の疑問も持たないで歌うだろうが、

世間の常識にもまれ、いかなる事象も多少斜めからしか見れなくなった大人は疑問を抱く。

①ヤギさんたちは文章を読んだり書いたりすることがてきるのか?

②何で手紙を読まずに食べてしまったのか?

③一番の歌詞から二番の歌詞へ、二番からは一番の歌詞へと続かざるを得ない

永遠にぐるぐると回りそうなこの歌の結末は、どうなるのか?


④二番め以降の手紙の内容は書いてある通り『さっきの手紙のご用事なあに』だが、

では最初に黒ヤギさんが書いた手紙の内容は何だったんだろうか?

他にも黒ヤギさんと白ヤギさんはどういう関係にあったのか?

郵便配達で足を豆にして行ったり来たりしてくれた人(この状況では動物に違いないが)は誰なのか?

疑問は次々に湧いてくるが、

まとまらないので、焦点を上記の四点に絞ろう。

①ヤギさんたちは読み書きが出来たのか?

ヤギさんたちは立派な高等教育を受けられるだけの生物に進化していた。

読み書きが出来て、コミュニケーションが取れるのだから、そう考えるざるを得ない。

いわゆる人間が登場しないことを考えると、この社会は『猿の惑星』ならず、

『ヤギの惑星』になった近未来の話ではないだろうか。

②何で手紙を読まずに食べてしまったか?

一番に考えるられるのは、読む時間もおしいほど極限的な空腹状態にあったこと。

二番めに考えるられるのは、

白ヤギさんは黒ヤギさんから届く手紙の内容をあらかじめ分かっていて、

その内容は、他のヤギたちにも見せたくないものだったので、

シュレッダーにかける代わりに、食べてウンチに出すという究極の廃棄処分をした。

だが、『さっきの手紙のご用事なあに』と書いたことと、

あらかじめ知っていたという推量は矛盾する。

やはりここは空腹状態にあったことに落ち着く。

未来社会も温暖化がさらに進み、海水は1メートルも上昇したため、

食物を得るための耕作地が極端に減少したためだ。

③行ったり来たりの話の結末はどうなるのか?

白ヤギさんは空腹状態から解放されたが、

また食物飢饉が来るのではないかと危惧して、食べ続けた。

50通を越えたあたりでついに手紙は喉もとで詰まり、呼吸困難に陥り、

救急車で緊急搬送。突然に話が終わる。

④黒ヤギさんから最初に届いた手紙の内容は?

まずヤギさん社会の状況を考えてみよう。

黒ヤギさんは個体数が多く、羽毛は半身泥にまみれ、

陽に焼けた顔と食料を満足に取っていないと思われる細身の身体つきから、

労働者階級もしくは奴隷階級ではないだろうか。

一方、白ヤギさんは個体数が少なく、ふさふさの羽毛は綺麗に整なわれ、

身体つきも顔もぽっちゃりしているので、上流階級もしくは貴族階級に属していると考えられる。



とある日、汗にまみれて畑で働いていた黒ヤギのフアイサルは、

従者のミックスヤギを従えて優雅に歩く白ヤギ貴族の娘、クレオパトラを人目見て恋に落ちた。

食料飢饉の中、苦労して集めた白紙に恋文をしたためた。

ヤギ社会では食料にもなる白紙は貴重なものだ。集めるは大変なのだ。

「嗚呼、クレオパトラ様、私は奴隷の身でありながら貴女を人目見て恋に落ちてしまいました。

私を不憫だとお思いになられたなら、どうかお返事をください。

フアイサル 拝」

差し出人の名前から奴隷階級の者からの手紙だと分かつたクレオパトラは、

中身を読みもせず空腹をまぎらわせるために食べてしまう。

手元に食べられない粗悪な黒紙があったので、白インクで、

なんなのよ、奴隷の分際で高貴な私に手紙を出すなんて、

さっきの手紙の白紙は空腹だった私にはちようど良い食料になったわ。

「恋に落ちた」なんてチヤンチヤラ可笑しいわよ!

あなたの手紙の本当の「ご用事なあに?」

私に貢いで白紙を食べて欲しいなら、もっと手紙を頂戴よ、という意味を込めて。

こうして恋に盲目なフアイサルが食料を貢ぐ手紙と、

それを催促する高慢なクレオパトラの手紙が行き来するという悲恋が、

この童謡に秘められていたのです。

---  ジ.エンド ---







コメント

名推理!

見た目は白髪、頭脳はまだ大人
名探偵ray次郎ですね

それとも酔っ払って
眠りのray次郎?

なにはともあれ無事3カ月経過

おめでとうございます❗ あったかご飯に納豆、味噌汁、漬物 儚き砂漠夢でしたね😂 ヤギさん郵便の爆走推理、感嘆しました!

コメントの投稿